国連の活動に対する貢献


 アジ研は,国連の目指すグローバルな犯罪防止や犯罪者処遇に関する政策の立案・実施に協力しています。例えば,アジ研は,毎年春,ウィーンで開催される国連犯罪防止刑事司法委員会(国連経済社会理事会の機能委員会,略称「コミッション」)に出席し,アジ研の活動や調査研究成果を報告しています。
 また,アジ研は,国連犯罪防止刑事司法会議(5年に一度開催,略称「コングレス」)においても,第10回コングレス以降,ワークショップをコーディネートするなど積極的に関わってきました。
 さらに,アジ研が研修・セミナーのテーマを選定するに当たっては,域内各国のニーズはもとより,コミッション,国連経済社会理事会,国連総会を通して決定された国連犯罪防止刑事司法プログラムの優先事項に十分な考慮を払っています。(第12回コングレスのテーマとアジ研の研修・セミナー


【コングレスにおいてアジ研がコーディネートしたワークショップのリスト】

回数 開催年 開催地 ワークショップのテーマ
13回 2015 ドーハ(カタール) 女性犯罪者の処遇及び改善更生
12回 2010 サルバドール
(ブラジル)
矯正施設における過剰収容に対する戦略とベストプラクティス
11回 2005 バンコク(タイ) マネーロンダリングを含む経済犯罪対策
10回 2000 ウィーン
(オーストリア)
コンピュータ・ネットワークに関連する犯罪
   
 第13回コングレス・ワークショップ
(カタール・ドーハ)
 コングレス・ワークショップの
パネリスト
   

【コミッションへの貢献】

 コミッションは,犯罪防止及び刑事司法の分野における国連の政策形成機関であり,国連加盟国の中から経済社会理事会で行われる選挙により選出された我が国を含む40か国のメンバーより構成されています。
 アジ研は,国連総会決議46/152「効果的な国連犯罪防止刑事司法プログラムの創設」(1991年12月18日採択)により,国連犯罪防止刑事司法プログラムの一翼を構成するものとされているプログラム・ネットワーク・インスティチュート(PNI)と呼ばれる研修研究機関の一つであるところ,同プログラムを主導する国連麻薬・犯罪事務所(UNODC)の求めにより,日本政府代表団とは別に,このPNIとしての資格により,コミッションに参加することとされています。
 コミッション(ウィーン,オーストリア)
写真提供:ハインツ・プファイファー

 2010年5月に国連ウィーン本部で開催された第19回コミッションは,その前月に開催された上記第12回コングレスのフォロー・アップ会合としての位置付けの下に,次の議題(手続的議題を除く。)について審議がなされました。

審議議題3  文化財の不法取引防止
議題4  犯罪防止刑事司法分野におけるUNODCと参加国による努力の統合と協調
(a)  国連国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の批准・履行の促進に向けたUNODCの取組
(b)  国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准・履行の促進に向けたUNODCの取組
(c)  テロ防止関連条約の批准・履行の促進に向けたUNODCの取組
(d)  その他犯罪防止刑事司法問題
(e)  その他UNODCの業務を支援する活動,特に国連犯罪防止刑事司法プログラム・ネットワーク,NGO及びその他の機関による活動
議題5  世界の犯罪傾向,新しい問題及びその対策
議題6  第12回国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)の結論及び勧告の検討
議題7  犯罪防止刑事司法分野における国連基準の適用

 このうち,議題4:「犯罪防止刑事司法分野におけるUNODCと参加国による努力の統合と協調」の(e):「UNODCの業務を支援する活動,特に国連犯罪防止刑事司法プログラム・ネットワークの機関(PNI)による活動」について,
(1)  アジ研が,我が国政府と国連との協定に基づき,国連に対して提出した平成21年の活動状況と平成22年の活動予定に関する年次報告書の要旨が,国連事務総長報告「国連犯罪防止刑事司法プログラム・ネットワーク・インスティチュートの活動」(E/CN.15/2010/10)の中に収録され,配布されたほか,
(2)  アジ研所長により,国連の重点的刑事政策の推進に対するアジ研の貢献状況を報告するステートメントが行われました。また,
(3)  アジ研を始めとするPNIの役割・存在意義をアピールするためのPNIsによるジョイント・ステートメントも行われました。

  《(2) アジ研所長によるステートメント》
   アジ研所長において,ステートメントを行いました。その発言要旨は以下のとおりであり,その原文は別添のとおりです。
  ①  アジ研は,その実施する国際研修等のテーマを設定するに当たり,犯罪防止刑事司法分野におけるUNODCの重点施策に十分配慮し,これを積極的に取り上げてきた。その結果,今次コングレスの主要議題とワークショップのテーマは,そのほとんどすべてにわたって,近年アジ研において行われた研修・セミナーによりカバーされている。アジ研は,このような形で,国連の刑事司法政策の世界各国への普及・推進に大きく貢献している。
  ②  さらに,アジ研は,今次コングレスにおいて,UNODCの重点施策の一つとなっている刑事施設における過剰収容対策をテーマとするワークショップを企画・運営した。この分野の世界の第一人者をプレゼンター,パネリストとして迎え,単に刑務所内での処遇の在り方にとどまらず,刑事司法の全段階におけるこの問題への取組の在り方を論じるという包括的・統合的アプローチを採用することにより,充実した内容の「勧告」を採択することができた。これにより,本ワークショップが,「刑事施設における過剰収容」という,世界中の刑事司法が直面している喫緊の重要課題を解決に導くための一里塚を築くことができたことをうれしく思っている。
  ③  アジ研は,今後とも,UNODCとの緊密な連携の下,他のPNIメンバーと協力しつつ,国連の犯罪防止刑事司法政策の拡充に努めていく。

  《(3) PNIsのジョイント・ステートメント》
   今次コミッションの会期中に開催されたPNIs間の協議により,コミッション参加各国政府代表団に対して, PNIの活動内容等を広くアピールするため,審議議題4(e)について,PNIとしてジョイント・ステートメントを行うことになり,その案文について協議し決定しました。
 このステートメントでは,
  ①  PNIは,UNODC及び1962年から2007年までの間にメンバーとなった世界中の16の機関から構成されていること(アジ研は最古参のメンバーとして,上記(1)の国連事務総長報告書の中でも,筆頭格の扱いを受けています。)
  ②  PNIは,犯罪防止・刑事司法分野における重要課題に取り組む国際社会を支援し,必要な国際協力を強化するために,情報交換,調査研究,キャパシティ・ビルディング等の技術支援などを行っていること
  ③  PNIは,国連条約・国連基準規則等の普及に寄与すべく,(@)調査研究,技術支援を通じて,キャパシティ・ビルディング等の各地域各国政府の要請に応えていること,(A)UNODCと協働して,データ収集・分析を行い,また研修用教材の開発等に当たっていること,(B)コミッションでの審議議題に関するワークショップの開催準備等を通じて,コミッションの運営に寄与していること,(C)コングレスの公式ワークショップの企画・準備・開催等を通じて,コングレスの運営に寄与していること
  などが述べられました。その原文は別添のとおりです。

   議題6:「第12回国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)の結論及び勧告の検討」についても,今次コミッションの会期中に開催されたPNIs間の協議により,PNIとしてジョイント・ステートメントを行うこととなり,その案文について協議し決定しました。
   このステートメントでは,PNIsとして,上記第12回コングレスの成果物であるサルバドール宣言の第9項を歓迎する旨が述べられました。これは,同項において,「我々は,犯罪防止及び刑事司法とテロ防止のための効果的な政策,プログラム及び訓練実現のための十分な人的・財政的リソースの配分を強く勧告する。この点において,…(中略)…犯罪防止能力強化のための技術援助の供与につき,我々は,加盟国及び国際的ドナー機関に対し,国連の犯罪防止及び刑事司法プログラムネットワークに属する機関(=PNI)を支援し,これらと協調することを求める。」とされた点を,特に高く評価するものです。その原文は別添のとおりです。

 今次コミッションの成果物としては,以下の諸問題に関する合計15本の決議(案)・決定(案)が審議され,採択されました。その要点は別添のとおりです。

【extract from】
ADVANCE UNEDITED VERSION E/2010/30
E/CN.15/2010/20
United Nations Commission on Crime Prevention and Criminal Justice Report on the nineteenth session (4 December 2009 and 17-21 May 2010)
Economic and Social Council Official Records, 2010
Supplement No. 10
【UNODC作成の第19回コミッション公式報告書(未定稿)からの抜粋】


決議(案)/決定(案)の標題等
          《アジ研仮訳》

(○内の番号は便宜上付した通し番号である。)
Matters calling for action by the Economic and Social Council or brought to its attention 経社理による行動を要請し,又は留意を求める事項
A.  Draft resolutions to be recommended by the Economic and Social Council for adoption by the General Assembly 経社理において国連総会の採択を得るべく提出すべき決議案
 Draft resolution I:
 Strengthening crime prevention and criminal justice responses to violence against women
決議案
① 女性への暴力に対する犯罪防止・刑事司法の対応の強化
 Draft resolution II:
 United Nations Rules for the Treatment of Women Prisoners and Non-custodial Measures for Women Offenders (the Bangkok Rules)
決議案
② 女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則(バンコク・ルール)
 Draft resolution III:
 Realignment of the functions of the United Nations Office on Drugs and Crime and changes to the strategic framework
決議案
③ 国連薬物・犯罪事務所の機能の再調整とその戦略的枠組みの変更
 Draft resolution IV:
 Twelfth United Nations Congress on Crime prevention and Criminal Justice
決議案
④ 第12回国連犯罪防止刑事司法会議
B.  Draft resolutions for adoption by the Economic and Social Council 経社理の採択を得るべき決議案
 Draft resolution I:
 Crime Prevention and Criminal Justice responses to protect cultural property especially with regard to its trafficking
決議案
⑤ 文化財の保護,とりわけ違法取引に対する犯罪防止・刑事司法の対応
 Draft resolution II:
 Support for the development and implementation of an integrated approach to programme development at the United Nations Office on Drugs and Crime
決議案
⑥ 国連薬物・犯罪事務所のプログラム開発における統合的アプローチの促進と実施に対する支持
C.  Draft decision for adoption by the Economic and Social Council 経社理の採択を得るべき決定案
Report of the Commission on Crime Prevention and Criminal Justice on its nineteenth session and provisional agenda and documentation for its twentieth session 決定案
⑦ 第19回国連犯罪防止刑事司法委員会についての報告及び第20回同委員会の暫定的議題
D.  Matters brought to the attention of the Economic and Social Council 経社理の留意を求める事項(決議・決定)
 Resolution 19/1:
 Strengthening public-private partnerships to counter crime in all its forms and manifestations
決議
⑧ あらゆる形態の犯罪に対抗するための官民協力の強化
 Resolution 19/2:
 Strengthening the collection, analysis and reporting of comparable crime-related data
決議
⑨ 比較可能な犯罪関連データの収集,分析及び報告の強化
 Resolution 19/3:
 Hosting of the Fourth World Summit of Attorneys General, Prosecutors General and Chief Prosecutors by the Republic of Korea
決議
⑩ 第4回世界検事総長会議の韓国開催
 Resolution 19/4:
 Measures for achieving progress on the issue of trafficking in persons, pursuant to the Salvador Declaration on Comprehensive Strategies for Global
Challenges: Crime Prevention and Criminal Justice
Systems and Their Development in a Changing World
決議
⑪ 「グローバルな課題に向けた包括的戦略に関するサルバドール宣言:変化する世界の中の犯罪防止及び刑事司法制度並びにそれらの発展」に従い,人身取引に対する取組を進展させるための方策
 Resolution 19/5:
 International cooperation in the forensic field
決議
⑫ 科学捜査分野における国際協力
 Resolution 19/6:
 Countering maritime piracy off the Coast of Somalia
決議
⑬ ソマリア沖における海賊対策
 Resolution 19/7:
 Strengthening of regional networks for international cooperation in criminal matters
決議
⑭ 刑事に関する国際協力のための地域的ネットワークの強化
 Decision 19/1:
 Strengthening crime prevention and criminal justice responses to counterfeiting and piracy
決定
⑮ 模造品・海賊版に対する犯罪防止・刑事司法の対応強化

 上記A,B,Cの決議案,決定案は,2010年7月22日及び23日,国連経済社会理事会において審議された結果,いずれも採択されました。

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