刑事政策公開講演会 実施報告
2023年1月27日、刑事政策公開講演会を開催しました。
本講演会は、1982年以来毎年、日本刑事政策研究会及びアジア刑政財団との共催により実施しています。
第41回となった今回の講演会では、国内外の多くの刑事司法関係者に講演をお届けすることができるよう会場参加(法務省大会議室)とオンライン視聴のハイブリッドでの開催方式を取り入れました。
その結果、講演会当日は、会場参加98名、オンライン参加277名と、多くの方に御参加いただくことができ、各講演テーマに対する高い関心がうかがわれました。
講演会の講師・演題
今回は、国際刑事裁判所及びケニア内務省保護局から講師にお越しいただき、それぞれ以下の貴重な講演をいただきました。
講演@
アントワーヌ・ケシア-ムベ・ミンドゥア氏
国際刑事裁判所第二副所長判事
「国際法に基づき最も深刻な犯罪の解明と責任追及について国際刑事裁判所の果たす役割
−特に児童に対する犯罪に目を向けて−」
講演スライド
講演A
クレメント・オケチ氏(ケニア内務省保護局次長)
「ケニアにおける少年司法制度の発展及び暴力犯罪に関わる児童の処遇」
講演スライド
講演の概要
ミンドゥア判事からは、ローマ規定に基づき、国際刑事裁判所が戦争犯罪等の深刻な犯罪の処罰においてどのようにその役割を果たしているのかについて、組織や捜査開始の要件、対象犯罪の種類、各国の協力の必要性などを含めて詳しく解説いただきました。また、法的支援を得て裁判手続に参加する権利や被害補償を受ける権利など、戦争犯罪等の被害者のために行われている様々な取組も国際刑事裁判所の重要な役割として紹介され、とりわけ、子どもの被害者や証人については、その特別な支援ニーズに国際刑事裁判所として特別な関心を払ってきたことが強調されました。
オケチ氏からは、少年司法の理論や適用されるモデルなどについて解説いただいた上、ケニアの少年司法で取り入れられている様々な施設内処遇、社会内処遇の方策について紹介いただきました。子どもの最善の利益を考慮した少年司法制度の構築が重要であることが強調され、アセスメントにより個々の少年により異なる処遇上のニーズを見極めること、施設内処遇を最後の手段として考え、コミュニティでの社会復帰を促進することなど、非行少年の処遇を行う上で貴重な視点を提供いただきました。
いずれの講演も、SDGs目標16に掲げられた公平、平和、包摂的な社会を目指す上で、大変重要なテーマであり、講演をお聞きいただいた皆様の今後の活動に有意義な知見をもたらしていただいたのではないかと思います。